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先輩!彼氏にしてください!
第1章 彼氏にしてください!

美術に対して、全然知識がない私でも感じる『作者の才能』
すごいという月並みな言葉しか浮かばないのがもどかしい。
さっきまで私に掃除を押し付けた福田くんにムカついていたのに、今日この絵に出会わせてくれたことに逆に感謝の気持ちすら湧いて────
「ほのか…先輩………?」
そして、その幸せな気持ちが、聞き覚えのある声によって砕かれる。
「………………谷川…くん」
振り返ると、谷川くんが私の背後に突っ立っていた。
お昼にあんなに言ったのに、効いていなかった……?
気分が良かったのに、最悪の人物によってそれを壊されて、私は箒を持ったままムッとして谷川くんに向き直った。
「ホントしつこい」
「………え?」
「え? じゃないでしょ、なんでどこにもかしこにもいるわけ!? キモチワルイって」
「いや……」
「この期に及んで言い訳? たく…。せっかくこの絵を堪能してたのに、あんたが出てきて───」
それは一瞬のことだった。
私のそばに駆け寄ってきた谷川くんは、初めて校門であった時のように、私の手を強引に掴んだ。
「ちょっ…」
「僕の絵を…見に来てくれたんですか……っ」
「………は?」
ナニイッテンノ、コノヒト。
意味が分からずに首を捻っていると谷川くんの口元が見たこともないほど緩んだのが分かった。

