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先輩!彼氏にしてください!
第7章 天才の苦悩



案の定、美術室に連れて行かれた私はようやく手首を解放される。


少しだけ上がった息を整えていると、早坂先生は、一つのキャンバスを持って私の目の前に立てたイーゼルの上に置いた。




「────────……………………」




やっぱり大袈裟だなぁ、と言いかけていたのに目の前に現れた『私の絵』に息を飲む。



────────── 今にも君がキャンバスから出てきそうなくらい魂の宿った作品というか…



さっきの先生の言葉が自然と脳内で再生される。



前見た絵の時から分かっていたけど、谷川くんは、本当に天才だ。


これに関しては言い過ぎることはない、と思う。


そっとキャンバスに近づいて、自然と手を伸ばす。


描かれた私の口元に手をそわせれば、息遣いが伝わってきそうな…


瞳をじっと見つめれば、瞬きをし出しそうな、そんな気がする。


すごく精密なのに、いつも鏡で見る私とはまた違って、また別の生命に感じる。


そして、絵の中にいる『安藤ほのか』は、堂々として強くて、それでいて優しさが満ちる……そんな人物像が滲み出ている。



「これは………素人目にも…分かる素晴らしさ…ですね」



「でしょー?」




誇らしげに言った早坂先生は、そのあと無理に私にお願いしてくることはなかった。


けど、私に絵を見せた事の効果はてきめんで、私はやや急いで生徒会室へと向かった。




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