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先輩!彼氏にしてください!
第7章 天才の苦悩
「出したくないもんは出したくないんですよ」
「なんでなの? 何が気に入らないの? 別に納得いってなくても試しに出してみるだけならいいじゃん」
減るもんじゃないんだし、と言いかけて、以前の谷川くんの言葉を思い出したのでやめた。
すると、谷川くんが今まで見たこともないような形相で私のことを見てきたので、びっくりして身をすくませた。
「納得いってなくてもって………それはちょっと失礼じゃないですか」
「…………それは…」
「自分がいいと思えないもので評価されても嬉しくもなんともない」
言い返さずに、私は肩の力を抜いた。
私には谷川くんみたいな才能はない。
だから、簡単に考えてたけど、そういうものじゃないんだと言われたらそれまでな気がした。
「……ご…めん」
流石に私が悪い気がして素直に謝る。
すると谷川くんは、脱力するようにして椅子に座った。
天才にも天才なりの苦悩があるってやつなんだろうか……
でもやっぱり客観的に素晴らしいあの絵を出さないのはもったいない気がする。
それに、コンクールってそもそも他人がジャッチするものなんだから、描いた本人がどう思っていようが関係ないような気がしてしまうけど、きっとそれは私が凡人だからそう考えてしまうだけなんだろう。