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月琴~つきのこと~
第1章 第一話【宵の月】 一
「お嬢さまがそのようにおっしゃるのならば、私は構いませんが、お嬢さま、その男には十分用心して下さいませ。洛外の貧しい村から来た者ですが、棄て子であったといいますから、どこの馬の骨か知れたものではありません」
卯之助は小文が治助を庇ったことがよほど癪に障るらしく、憎々しげに言い放った。
「それよりも、卯之助さん。大番頭さんが探していたというのならば、早く店の方に戻ったほうが良いわ」
「はい。それでは、私はこれで失礼します」