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月琴~つきのこと~
第3章 第二話 【月琴~つきのこと~】 一
そして、凄絶なまでの美しい桜は妙乃に姉を嫌が上にも思い出させるのであった。妙乃は三人姉妹の末っ子であり、上に二人の姉がいた。妙乃の父は京の都でも屈指の大店(おおだな)にして老舗の「信濃屋」の主(あるじ)惣右衛門(そうえもん)である。二人の姉娘は共に美貌であったが、殊にすぐ上の姉小文(こふみ)は才色兼備の呼び声高く、「信濃屋小町」と洛中の若い男の間で噂になっていた。その次女小文が突如として姿を消したのは今から三年前のことになる。