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咲くのも、散るのも
第1章 予期せぬ再会
「男に向かっておいしそうだなんて。困った人だ」

拓海はよろける萌絵の体をぐっと引き寄せた。

萌絵は、半分夢の中にいるような気分だった。

「こうしてみたかったの」

現実感が薄い中、衝動のままに拓海の胸に顔を押し当てて、思い切り息を吸い込んだ。

「そういう萌絵さんは、桜の花みたいなきれいな匂いがしてますよ」

拓海は初めて萌絵を下の名前で呼んだ。萌絵より頭一つ大きい拓海は、萌絵の額に形のいい鼻先を押しつけ、くんくんと匂いをかいだ。そして、萌絵の体をエレベーターの壁に押し付け、両手をつないで自由を奪うと、優しく唇を重ねた。
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