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ラストソング
第1章 出会い
美和さんの話には、正直驚いた。

初めて自分達のライブを観て、聴いたばかりだというのに、
1曲目から丁寧に意見をくれた。

楽器のこと。
音質のこと。
演奏そのもののこと。
姿勢や目線。
立つ位置。
マイクとの距離感。
ステージ運び。

1つ1つが物凄く深くて、
有り難かった。


聞いていたら、
すぐにスタジオに行って、
演奏したくなるほどだった。


リョウもそれは同じだったらしい。
明日のスタジオ練習の時間が待ち遠しくて仕方なかった。


サクラはいつも無表情なので、
どう思ってるのかは判らなかった。


それと、新しいメロディと歌詞も浮かんできてた。
美和さんのことを見てたら、どんどん湧いてきた。




俺は太郎さんに、

「スミマセン。
朝までと思ったんですが、
何か楽器弾きたくなっちゃって。
お先に失礼して良いですか?」


「おう。
美和ちゃんにやられたな。
そうなんだよな。
話聞くとさ、
居ても立っても居られなくなるよな。
またな」


美和さんもそろそろ帰ると言うので、
みんなに挨拶して、俺は美和さんと一緒に店を出た。


方向を訊いたら、通り道だったので、
同じタクシーに乗った。


先に美和さんのマンションに着いた。


「美和さん、今日はありがとうございました。
来週の金曜もライブあります。
誘っても良いですか?」


「禁煙の箱だったらね!
おやすみなさい。
レコ発、おめでとう!」と言って、
美和さんはタクシーを降りた。


降りる前に、小さな白い手をギュッと握ると、
美和さんは照れ臭そうに笑っていた。


そのまま5分ほど走らせると、
俺の…というか、直子のマンションだった。
結構近い処に住んでることに驚きながらエレベーターに乗り、
部屋のドアを開けると、
玄関に大きなドクターマーチンの厚底のブーツがあった。




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