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あおい風 あかい風
第10章 空港
 「チェロは 後ろの席でいい?」
  必然として 助手席に乗ることになる。

 消えてしまいたい。

 「ひさしぶりだね」
 力をふりしぼって「そうね」と言えた。

 毎日 部屋に帰り 髪飾りの入ったプラスチックのケースの横に 眼鏡を置いた。最初の頃は 電話がかかってくるのではと 待った。
 いつまでも迎えの来ない髪飾りに ふれてみようかと蓋をあけたこともあった。さわれば 消えてなくなるかもしれないと やめた。
 電話は かかってこないのだ、と やっとわかった。

 結月は 袖のない黒のハイネックセーターに濃いワインレッドの細身のパンツで そこにいた。白い肩が小さく痛々しい。振り向いた目の中に 怯えをみて 胸がえぐられるようだった。
 それなのに 送っていくと申し出てしまった。

 今度 逢うことがあったら、と 色々思い描いていたが どれもあてはまらなかった。

 「しずかだね」

 黙っている。
 「送っていく、なんて 悪かったね」
 「ううん。そうじゃあなくて」
 長い沈黙が 苦しい。

 結月は 前に進んだのだ。
 「これが最後」
 陽輝の知らない世界で 成長し 生きてゆくのだろう。

 あのまま 見送ればよかったと後悔した。何を期待していたのか。
 
 「はるにぃ 結婚するの?」
 「いいや」

 突然の質問の意味がわからないまま 事実だけを反射的に答えた。
 「結婚の報告に 帰ってきたのかと思って」
  「いや。大輝の誕生日だから 両親のそばにいてやりたくて」

 結月のため息で やっとわかった。「結婚したいと思っている人がいる」そう言ったのだ、あの時。
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