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あおい風 あかい風
第10章 空港
 「あなたじゃあなければだめなの」
  あ・・・そうか。
 考え続け もう少しで答えが見つかりそうだった、その最後のひとピースが見つかった。
 
 結月じゃあなければだめ、ということか。

 よかった 間に合って。
 
 チェロは車の後部座席においたまま やっととれたホテルにチェックインした。

 部屋の明かりはつけず 窓際に並んで 夜景を見た。
 こんなに多くの生活があるのか、とひとつづつ灯る光を見ながら思う。
 強い風の中でも 激しい雨の中でも 揺らぎなく灯る生活の光。
 この中のどれだけの人が幸せなのだろう。

 「髪飾りを 取りに来るかもしれないと 待っていたんだよ」
 「捨てて よかったのに」
 「よく似合っていたから、ね」

 同じ言葉なのに 今日は 苦しくない。

 陽輝が指先にキスしながら
 「ふるえてる?」
 「どうしてだかわからないけど ふるえがとまらないの」
 「とても幸せなのに ふるえがとまらないの」
 「もういちど いって」
 「とても 幸せ」
 「おれ 以上に?」
 「はるにぃの百倍くらい 幸せ」
 「しらないくせに」

 深く長いキスをした。
 キスをすると お互いに 強く求め合っているのが伝わってくる。

 「まだ ふるえてるね」
 「ぎゅって だいて」
 力をこめて抱きしめても 結月の震えはとまらなかった。

 「明るくする?」おどけた声。
  「このままで」

 薄明かりのなかに 結月の身体が ぼんやり白く浮き上がる。
 陽輝を待ちうけ 手を伸ばす。
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