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あおい風 あかい風
第5章 冬のあと
 卒業式のあと 泣きはらした顔の戸渡結月に呼びとめられた。
 「大輝のお兄さんが 渡したいものがあるって」

 泣いていても綺麗なマドンナの後ろに 背の高い人が立っている。眼鏡のうしろの目が大輝より大きいくらいで とてもよく似ている。

 「両親は来ない、と言うもので 代わりに出席しました。大輝の兄です」
 手に卒業証書の筒を持っている。わたし以上に 悲しんでいる人もいるのだ。だからといって 悲しみがやわらぐわけではないけど。

 「大輝の遺品の中にありました」

 「遺品」という言葉に 新たな涙がでる。

 渡されたのは わたしの写真だった。

 1枚は ヘアスタイルからすると一年生の頃。無邪気に笑っている。

 2枚目は 二年生だと思う。冬の制服を着て「えっ」というように首をかしげて立っている。
 いつ撮ったのだろう。

 3枚目は 夜 塾の帰り 大輝が訪ねて来たときに 公園でわたしが自撮りして 大輝に送ったものだ。わたしの頬に大輝がキスしてる。無口で無表情だった大輝が 笑っている。くすぐったそうに笑うわたしは とても幸せそうだ。それをプリントアウトしたのだろう。

 しゃがみこんで泣くわたしの背中を マドンナが泣きながらさすってくれた。

 「迷惑だったら 捨ててください」



 陸上部の倉庫に行くと 大輝が「ここからやりなおしたい」と言ったのを思い出す。

 やりなおせるといいのに、と何度も 何度も思う。


  「こわがらせたり 傷つけたりしないから」



 うそつき。
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