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あおい風 あかい風
第7章 電車
「また あったね」 そう言われても 見下ろしている男に覚えがなかった。
「わすれちゃった?だから 電話くれないの?」
このリズミカルな話し方、電話?なんだか 思い出せそうな。
「今日は チェロと一緒だね」
あ・・・ あの時 「終点ですよ」と教えてくれた男の人。
なぜ 大輝に似ていると思ったのか。ちっとも似ていないのに。
「思い出してくれた?」
返事のしようがない。
「今日は 忙しい?」
黙っていると
「異常に 無口なの?」
思わず笑ってしまった。
「やぁ きれいだね」

チェロを背負い 電車を降りると 男はついてきた。改札を抜け 駅構内を出ても ついてくる。腹立たしいし 気味が悪い。振り払お
うとしても チェロを背負っているので 早く歩けない。立ち止まり
「ついてこないでください」と言うと
「同じ大学だから 仕方なくない?」
「あら。ごめんなさい。へんなこと言って」
「うそ」
「えっ?」
「チェロをかかえて この駅で降りたら どこへ行くかなんてすぐわかっちゃうよ」
結月は 呆れてしまった。悪い人ではなさそうだけど 親しげにされると煩わしい。
「じゃあ もう ついてこないでください」
「ねぇ ひとめぼれ、って 信じる?」
「えっ?」 話が 飛びまくって ついていけない。
「ひとめぼれを信じていいものかどうか 確かめたいんだ」
「あそこのカフェで待っているから 学校が終わったら 来て」
そう言うと 通りを走って横切った。
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