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あおい風 あかい風
第7章 電車
 新しい生活が始まると 寂しさは 日に日に深くなった。
 早く夢中になれるものを見つけなくては。
 個人レッスンは 高額すぎて両親にたのめなかった。音大の授業料だけでも サラリーマンの家庭では厳しい。

 グループレッスンに参加すると 教師は 結月を冷遇した。言葉の端はしに「綺麗だからといっていい気になるなよ」という感情が
見え隠れした。
 美しく生まれたからといって いい思いをしたことなんかないのに。
 

 ドイツ語が 突然聞こえなくなった。誰かが イアフォンを引き抜いたのだ。
「終点ですよ」
 男の人が 覗きこんでいる。
 見回すと 電車の中から 人がいなくなっている。

 「あ・・・すみません」
 結月が慌てて降りると その人も一緒に降りた。駅員さんではなかったのだ。
 また やってしまった。
 ぼんやりして 電車を乗り過ごしてしまうことが最近多い。今日は 終点まで来てしまったのだ。戻らないと。
 スマホで乗り換え案内をみていると
 「前に チェロを持っていたでしょう?」
 さっきの男の人が話しかけてくる。
 「はい」

 親切なのか 不躾なのか。
 背が高く 切れ長の目。大輝に似てる。今にも笑い出しそうな口元は 違うけど。
 「慌てていないと言うことは 時間があるんでしょう?」
 「?」
 「上にスタバがあるんだけど お茶しない?」
 「?」
 「しないか。そうだよね」
 話し方がリズミカルだなぁ、とぼんやり考える。
  いきなり結月のスマホをとると 何か打ち込んだ。抵抗するヒマもなかった。
 「ボクの電話番号 入れておいたから。ユ・ ウ ・ス・ ケ。よかったら 電話して」そう言いながら スマホを返してくれた。
 「じゃあ、ね」
 
 返してもらったスマホにイアフォンを差込み直し ドイツ語を聞き始めた。
  何か 夢中になれるものを見つけなくては。
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