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あおい風 あかい風
第8章 髪飾り
 マンションの廊下を歩きながら 身体が震えた。
 あれほど まっすぐ 求められたのは初めてだ。
 いや。結月は 落ちる滝の水のように いつもまっすぐだった。「はるにぃ」と飛び込んできた。あの頃は受け止めることができた。でも 今 女としての結月を受け止めることはできない。

 身体の震えがとまらない。

 タクシーに乗り込み 行き先を告げると シートに深く座った。頭の中で 結月の声が渦巻いている。

 「おいていかないで」
 「ひとりにしないで」

 絡み付く白い腕を思い出す。すがりつく涙に埋まった目が脳裏から消えない。
 身体は まだ震えていた。

 なんということをしているのか。昔からそうだったように助けをもとめているのに ふりきってしまった。居場所が見つからず 怯えているのに 置き去りにしてしまった。

 「わるいね。もどってもらえるかな」
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