この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
Memory of Night 2
第13章 投影

「何その変装。誰かと思ったら」
「変装なんてするか、ボケ。キャップだけだろーが。晃から借りてるチャリなんだろ? 誰かわかんないやつに貸すなよ」
珍しくド正論だった。
春加がキャップ帽を取ると、セミロングの茶髪が緩く広がる。
帽子の下の顔にさらに驚いた。
いつもの目の回りを囲むアイラインが無かった。瞳の色は薄茶色。釣り上がってきつそうに見えていた目付きが今日は柔らかかった。くっきりと大きい目はどちらかといえば垂れ目だ。
淡いオレンジ色のシャドーが塗られた目元は華やかだがケバくはなく、チークなのか自転車を漕いできたあとだからか、頬もうっすらとピンク色。本当に、普段とは別人のようだった。
「…………わかんねーよ、顔全然違うじゃん」
「ハルちゃんのナチュラルメイク。絶対こっちの方がいいよね」
亮が割って入って答えると、春加はその顔を横目でにらみつけた。
「ーーさて、そろそろ着替えて始めようかね」
あと十分ほどで幕が上がる。
春加は大きく伸びをし、帽子を深くかぶり直した。
「待ちに待ったショータイムの始まりだね」
ステージの袖へと歩を進める春加の後ろ姿を見送りながら、亮はにっこりと笑顔を見せた。

