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Memory of Night 2
第13章 投影

そう、雨。灰色の景色が脳裏に浮かぶ。
客は少なかった。テーブルの下、客に跪かされて咥えさせられる寸前だった。店の扉が開き、その人物は現れた。
スタッフたちを押しのけ、春加の名前を何度も呼んだ。
テーブルの下から抜け出すと、そこに彼女は立っていた。人形のように美しかった彼女の顔が、呆然と自分を見下ろしていた。
「なんで……」
灰色の目が歪む。一瞬だけ垣間見えた表情がどんな感情を表していたのか、春加にはわからなかった。
肌を露出し、男の欲望の捌け口に自らなろうとしていた自分を、彼女はどう見ていたのか。軽蔑、同情。あるいは侮蔑。そういった類いの感情を、持っていたのではなかったか。今となっては、確かめようもなかった。
「こんなとこで何してんだ……! 戻ってこい!」
差し出された白い手。
春加はそれを振り払った。
あの時その手を掴んでいれば、自分の人生はもっと変わっていたのだろうか。
「ーー桃華さん、だっけ?」
どくんと、心臓が鳴った。名前そのものが、酷く懐かしく思えた。
「……顔を忘れていたくせに、よく名前を思い出せましたね」
「ね、僕も思う。彼女、宵くんの母親なんだろう? とてもよく似てる。だから彼に声をかけたの?」
「……さあ」
「彼への嫉妬はーーいや、彼の母親への嫉妬は、綺麗な外見に対してかい? それともーー」

