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Memory of Night 2
第13章 投影
「ショーどうだった?」
「ま、すごいとは思ったけど」
「ふーん。ならチップでも捩じ込んでやりゃ良かったじゃん」
宵の言葉に、晃は一瞬押し黙った。それからすぐに悲しそうな顔になり、言う。
「……本当に、最近どんどん品のない遊びを覚えていっちゃうね。股に札束を挟めだなんて」
「そこまでは言ってねーよ。品がないのはどっちだ、変態」
宵はせいぜい胸元のつもりだったが、晃は違うらしい。しかも札束ってなんなのか、束って。
「さすがにお金は捩じ込まなかったけど、小さいブーケは贈ったよ。彼女見当たらなくなっちゃったから、店長さんぽい人に預けてきた」
おそらくマスターの亮のことだろう。
「……へー、キザ」
「ちょっとした気持ちだよ」
そう言って、晃は笑った。
「……届くと、というか、気付くといいけど」
「え?」
最後の言葉が聞き取れず、宵が振り向くと、ふいに自転車のハンドルを奪われた。
「俺チャリで帰る。宵は走ってついてきなよ」
「は? なんでだよっ。今は俺が借りてんのに」
晃は跨がり、こぎ出した。
「だって、せっかく貸してあげたのにまた鍵かけてないし」
「違うって、あれは買い出しに」
本当に自転車に乗って進んでいってしまう晃を、宵も走って追いかけるほかない。
夜風はおもいのほか冷たくて気持ちが良かった。
もうすぐ五月が終わり、新しい季節がやってくる。
何かが始まる予感がしたーー。