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Memory of Night 2
第3章 甘い遊戯

「迎え!? 何そのビップ対応。キャバでも始めたん?」
「んなわけねーじゃん。ただの居酒屋。駅前の」
最寄り駅の前には確かに居酒屋が多い。明は意外と口が硬く言いふらすようなことはしないと思っているが、ハプニングバーとはさすがに言えなかった。
「それで送り迎え? なんか怪しくない? 知り合いってわけじゃないんでしょ?」
「違う」
それは宵も感じていた。
いかがわしい店とはいえ、自分がやっているのは本当にドリンク運びと、たまに料理だけ。イベントがある日はたまに雑用を手伝うことはあるが、それだって小道具を運んだりテーブルを並べるくらいだ。
学校が終わったあとの迎えも、九時半に上がったあとの送りも、春加がわざわざ店を抜けてしてくれている。
そこまでして自分を雇う意味があるのだろうか。まだショーの出演者を探しているのならそのビップ対応も頷けるが、ショーに出てみないかと誘ってきたのはこの間の一回のみ。しつこい勧誘もない。そもそもまだ未成年の自分を雇うこと自体がリスク大だと言っていたのに、なぜ雇ったのか気にはなっていた。
「ま、あんま詮索はしないけどさ。気を付けなよ、あんた年齢も性別も問わずモテるから」
そう言って、明はちらりと周りを見渡した。
ちらちらと、あるいは堂々と熱い視線を送ってくる学生達がいた。母親譲りの容姿のせいで人目を惹くことはあったが、最近その数が増えた気がする。見覚えのない顔ばかりだから、おそらく今年度入学してきた一年生が多いのだろう。
「物珍しいだけだろ、この灰色の目が。動物園のパンダと似たようなもんだよ」
「さすがにそれは違うでしょ」
明は声をあげて笑った。
そのタイミングで予鈴が鳴る。
「やば」
明は小走りに校内へと入っていく。
宵は一瞬立ち止まり、晃のことを思った。
(なんて切り出そっかな……)
憂鬱な気分でため息を吐く。まず帰ってから誤解を解かなければならず、それだけで気が重いのだった。

