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Memory of Night 2
第14章 夏休みに向けて

最初は呆然としていた宵だったが、我に返って慌てて首を振った。
「出ません、踊りなんて無理ですし……」
「私、教エル、先生デスヨ? 心配イラナイネ!」
「いや、心配とかじゃなくて……」
率直に言って出たくない。
押され気味の宵に、助け船を出したのはマスターの亮だった。
「その子は学生ですし、ショーには出してないんですよ。ドリンク専門で雇っているだけなので。本格的に踊りの稽古に通う時間も無……」
不意に握手のため、握られていた手が離れる。
宵の側を離れ、亮の隣へと歩いていく。そしておもむろに電卓を取り出して、こそこそと耳打ちを始めた。
そして、アメリアが離れると、亮は咳払いを一つ。
「宵くん、何事も経験じゃないかな? 日本で生まれたのも何かの縁。日本の文化に触れてみるのも悪くないし、先生がサポートしてくれるって言うなら是非一緒に美しい舞を……」
「……何一瞬で手のひら返してんすか? さっきの電卓何?」
何の金額を提示されたのか。味方になってくれると思っていたのにすぐに売り払われた気がして、宵は亮を睨む。
その後も勧誘は続き、やいのやいのと収集がつかなくなったその場を鎮めたのは春加だった。

