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Memory of Night 2
第14章 夏休みに向けて

ああ、と思う。明には居酒屋でバイトしていることになっていた。
明は指でとんとん、と宵の席の椅子を叩き、そっと座るよう促す。
腰を下ろすと、明はわずかに声を潜め、言った。
「暇な日あるならさ、海行かない?」
「海?」
「夏と言えば、でしょ?」
「まあ……」
確かに、夏の定番と言えば海である。楽しそうな誘いではあるけれど。
「どうせ大人数でわちゃわちゃ行くんだろ? 俺はいーよ」
去年の姫橋祭りの時も、明は九人くらいで行っていたのだとあとから聞いた。しかもみんな女子。
そんな中に誘われても、と思う。
「あ、それはそれでまた別日に計画してるから安心して。じゃなくて、一泊で……」
その時だった。
横からぽてっと、何か柔らかいものが落ちる音がした。
宵と明が同時に振り向くと、パンを両腕いっぱいに抱えた大山和仁(おおやまかずひと)が、わなわなと震えて立っていた。大山の足元には焼きそばパンが一つ落ちている。それほどガタイがいいわけではないが、見かけによらず大山は大食漢だった。
とはいえ、さすがに。
「……買いすぎじゃね? パン」
「お、お、おまえら、泊まりで旅行だと? 不純異性交遊だろ、そんなの。つかいつからそんな仲に……」

