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Memory of Night 2
第15章 海
「おお、見えた、海だ!」
バスの中、窓際に座っていた大山の声で、宵、晃、明は一斉に窓の外に視線を向けた。
天気は快晴で、雲がほとんどない青空から太陽が照りつけている。海沿いの町。窓の向こうには白い砂浜と青い海が見える。
電車とバスを乗り継いで二時間半。宵たちの住む県には海がないので、新鮮な光景だった。
「綺麗だよねー。やっぱ海ってテンション上がる」
通路側の明も大山の隣から、窓の外を覗いた。
一列後ろの窓際に宵、隣に晃が乗っている。
「みんな、次のバス停で降りるよ。そこから十分くらい歩けば叔母さんとこの民宿に着くから」
明が声を張る。
「……ほんとにただで泊まっていいわけ? しかも二泊も」
当初は一泊の予定だったのに、いつの間にか二泊になった。その方ががっつり楽しめるから、だそうだ。
「一泊分だけでも払うよ」
宵と晃は食い下がるが、明は笑いながら首を振る。
「いいっていいって。民宿って言っても素泊まりだし、もともとそんなに高い部屋でもないし。一部屋だしねー」
「明ちゃんも一緒に泊まるの?」
「……あ、あたしは叔母さんの部屋で寝る、から大丈夫」
晃が通路側から顔を覗かせ聞くと、明はわずかに顔を強張らせながら答える。
夏休み前に宵が言った、変態という言葉を少し気にしているのかもしれない。明にしては珍しく、晃に対しての警戒心が垣間見えた。
不意に運転手の声が響く。もうすぐ次のバス停に着くらしい。
「よし! 降りる準備してね」
「はーい」
バスが停まる。四人は立ち上がり、順に席を離れた。