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Memory of Night 2
第19章 夏の思い出
明が忘れていった浮き輪をついでに回収し、ボート置き場に拝借したボートを戻した。他にも何隻かあり、流されないよう頑丈なロープで繋がれている。
複雑な繋ぎ方に見えたが、晃は器用に借りたボートも繋ぎ直していく。
宵にはもう手伝う気力はなく、近くに腰掛け眺めていた。
「できた」
「……器用すぎ。その手際の良さなら完全犯罪もいけるな」
「何物騒なこと言ってんの。今日は緊急事態だったから仕方なく拝借しただけだって」
晃は苦笑する。
それから二人は急いで明と大山がいる場所へと戻った。
「あ、二人ともおかえりー! あああ、浮き輪まで、取ってきてくれたの!? 本当にありがとう!」
明は思っていたよりも元気な様子で、駆け寄ってくる。
「ただいま」
と晃。
「だから家じゃねーし、なんなら外なんだよ」
と宵。この突っ込みも何度目か。
大山の姿がなかった。
「大山は?」
「え、あ、えっと、どっかに……」
宵が尋ねると、明は珍しいくらいに挙動不審になった。面白いくらいの動揺が見て取れる。
わんわん泣いて、我に返った大山は恥ずかしくなって明のそばを離れたのだろうか。
「大山、帰るぞ!」
「お、おう」
宵が声を張ると、岩陰からひょこっと姿を見せた。
帰り道でも、明と大山は何も話さずあからさまに距離を取っていた。明は宵の隣、というより宵が持つ浮き輪に隠れるように、大山は晃の隣で目さえ合わせようとしなかった。
二人の様子はまるでお互いを意識し始めた中学生のようで、ついつい見ていて笑ってしまいそうになるのだった。