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Memory of Night 2
第22章 交渉

志穂のものはほとんど新しい家に運んでいったようだが、まだ奥に少し残っていると言っていた。それを引っ張り出したのだろう。
確かに志穂の華奢さだと、ティーシャツのサイズはかなり小さい。見るからに春加には入らない。それは理解できるが、彼女が宵の服を着ているのも酷く不愉快だった。
「腹減ってんだろ? 料理あっため……」
「いいから、早く用件」
春加の言葉を遮り、晃は短く催促した。
長く話をしたい相手ではなかった。
「はいはい。ずいぶん嫌われちゃったなあ」
春加は白々しく呟く。
「最初に喧嘩を吹っ掛けてきたのはあなたでしょう?」
「この前のドライブの時のだろ? ラブホに寄ってきたってやつね。馬鹿だなあ。あんなの、冗談に決まってんじゃん」
春加は声をあげて笑った。
「自分の恋人を信用してないの?」
晃はつい春加を睨み付けてしまう。
同時に、あの日の宵の言葉が蘇る。
ーーそんなに、俺の話が信じらんねー?
傷ついた顔をしていた。あんな表情、付き合ってから一度も見たことはなかった。
思い出すと心が痛む。自分があんな顔をさせてしまったのだと思うと、なおさらだった。

