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Memory of Night 2
第23章 墓参り

宵はそこで席を立つ。
そういえば、飲み物がなかった。
冷蔵庫から麦茶を出し、二人分をコップに注いでテーブルに置いた。
「ありがと」
宵は頷いて、プリントを眺める。
「五月の三者面談で言われて。やりたいこともねーのに、大金払って大学に行ってなんの意味があるんだろって最初は思ってたけど……」
「やりたいことなんて、ゆっくり探せばいいんだよ」
晃の声は優しかった。
「何年もずっと志穂さん中心で生きてきたんだから、急に自分のこと決めろって言われてもピンと来ないのは当たり前。……ゆっくり考えればいいし、もっと肩の力を抜いて選べばいいんだよ、進路なんて。それで君の将来が決まるわけじゃない。だったら大学に進学して、バイトでもしながらいっぱい遊んで、楽しみながらなんの仕事をしたいか考るのも俺はアリだと思うけど。……時間も、お金も、君自身のために使っていいんだよ」
宵はプリントに目を向けたまま、しばらく動かなかった。
だがやがて、晃を振り向き小さく笑った。
「ーーうん、そうだな。進学してみるか」
担任の倉木にも同じようなことを言われた。今まで誰のために時間を使ってきたのかと。

