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Memory of Night 2
第25章 夏の終わり

宵は呆れたように目を細めた。
「あとは、もっと遠くに行くんかなーとか」
「遠くって?」
「……海外?」
「……それは考えてなかったな」
晃は笑った。宵が想定していた内容の方が、自分の話より大事(おおごと)だったのか、と思う。
宵はむっとした顔で、晃を睨む。
「つか、やっぱ全然信用してねーじゃん」
「信用?」
その時だった。ひゅー、とすきま風のような音が聞こえ、一発目の花火があがる。
二人は思わず夜空を見上げていた。
闇の中、華やかに広がる紅色が美しかった。
金、緑、紫、続けざまに何発も打ち上げられ、夏の終わりを鮮やかに彩る。
花火に視線を向けたままの晃に、宵は拗ねたような視線を向けた。
「ーーあの日言っただろ? おまえとずっと一緒にいたいって。それって、物理的な意味だけだと思った?」
問われて、晃は思い返していた。
去年の十二月、まだ付き合ってすぐの頃だ。この地域では珍しく雪が降ったのだ。
朝早く宵を連れ出し訪れた姫橋神社。白く染まった雪景色の中で、宵がくれた言葉。
そんなふうに宵が自ら告白じみた言葉をくれたのは初めてだったから、それこそ舞い上がりそうなほど嬉しかったのを晃は覚えている。

