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Memory of Night 2
第26章 承諾書

「緊縛って言ってもやばいものじゃないから安心しろ。あくまで衣装を引き立てるための小道具だ」
「だからって、なんであのおっさんに……」
「その道のプロなんだから当たり前だろう。メイクも衣装も写真の撮影も、みんなその道のプロがそれぞれ担当するだろう? だったら緊縛も、緊縛に精通してる土方さんが担当してなんの不思議がある」
「…………」
「おまえがそういう趣味を持つのは勝手だけど、ポスター撮影はちゃんとした仕事だからな。プレイとしての緊縛は晃と家でやれ」
「……やらねーし、そんな趣味ねーって!」
(くそ、口じゃ勝てねー……)
宵は舌打ちをした。
なぜ自分がそういう趣味を持っていて、仕事と趣味の区別がつかない人間のように言われなければならないのか。いつの間にか話をすり替えられてしまった。
納得はいっていないが、これ以上春加に文句を言っても口で勝てる気はしない。
サインをしてしまったことは紛れもない事実なので、スタッフルームを立ち去るほかなかった。
「あ、まかないまた作ってくよ、何食べた……」
平然と尋ねようとする後ろからの声は無視し、やや乱暴にドアを閉める。
春加にも苛ついていたが、言われるがままあっさりサインをしてしまった自分にも苛立っていた。
(欲なんか出すんじゃなかった)
深いため息とをつきながら、宵は土方に注文されたカルーアミルクを作るため、キッチンへと戻っていった。

