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Memory of Night 2
第27章 コンセプト

その時、背後で声がした。
「……酒……」
口を開けばまったくそれしか無いのか、と呆れずにはいられない。
「もうねーって。何杯飲めば気が済むんだよ。いい加減やめとけって、死ぬぞ」
強い酒は体に悪い。いくら飲み慣れているといっても、さすがに心配になる。
ぴくりと、彼女の指が動いた気がした。続いてのそのそと、横たわったままの体も蠢く。
宵が後ろを振り向き春加の顔を覗くと、薄く目を開いていた。
そのとろんとした顔が、宵の姿を視界に入れた瞬間、こわばる。
「……?」
春加の表情の変化を不審に感じたが、寝ぼけているだけかと思った。もしくは、酔って直前の記憶が無くなっていて、自分がいる場所や置かれている状況を脳が理解できていないだけなのかと。
だが春加は唇を震わせ、思いの外(ほか)はっきりとした呂律で、ある名前を口にした。
「……もも、か……」
「ーーえ?」
彼女に意識を向けていなかったら聞き逃してしまうかもしれないような、微かな声で。
宵が驚きに目をみはる。
それは宵にとっては懐かしい名だったが、春加は知らないはずの名だ。
春加の茶色い瞳ははっきりと自分を捉えていた。
ーーそれが、おかしいのだ。
『桃華(ももか)』は宵と瓜二つだった、母親の名なのだから。

