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Memory of Night 2
第30章 花魁ショー

言いたいことはあるのだろうが、ここが店というのもあるのか、それ以上の追求はなかった。
「もうすぐショーが始まるから、コーラ飲んで待ってて。どっか席座れるかな」
「ここでいいよ。知らない子に声かけられて鬱陶しい」
「そうそれ。おまえの方が口説かれまくってんじゃん」
「口説かれてはないけど。やだ?」
「別に。もう慣れた。学校じゃいつも女子に囲まれてんじゃん。ーーま、いーや。ごゆっくり。俺は仕事戻る」
宵にも言いつけられている仕事はあった。ずっと晃と話しているわけにはいかない。
踵を返そうとした時だった。
「俺、コーラじゃなくてミルクが飲みたいな」
ぼそりと、晃が呟く。
「牛乳? そんな好きだったっけ?」
たまにコーヒーに入れ、カフェオレにして飲むことはあったが、牛乳単体で飲んでいる姿は見かけたことがなかった。
「んじゃ作ってくるよ」
一応客だし、マスターも前に晃に対し、ドリンクサービスするからおいで、なんて声をかけていたので、問題はないだろう。
だが宵がキッチンに向かおうとすると、腕を引かれ振り向かされた。
「そうじゃないって」
「は? 何が?」
首をひねる宵に、晃は意地悪く口許を歪めた。
「ーー牛乳じゃなくて、宵のミルクが飲みたいの」

