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Memory of Night 2
第34章 衣装合わせ

付き合ってることを内緒にということで、晃はいつもより距離をあけたところから眺めていた。
ふと別の視線を感じ顔を向けると、春加と目が合う。
「ーーどう、似てる? 母さんに」
正直なところ、少し意地悪な気持ちはあった。
春加はわずかに黒塗りの瞳を見開き、宵から視線を逸らす。動揺を隠すように、腕を組んで呟く。
「……さあ、桃華の顔なんてもう忘れた。ーー時間がないから、遊んでないでさっさとその着物達羽織れ。おまえは今日はおとなしく、あたし達の着せ替え人形やってりゃいいんだよ」
その辛辣な物言いに、アメリアやスタッフ達が一瞬しーんとなる。
「マスター、煙草吸ってきます」
「はいはい。喫煙スペースは……」
「外行くんで結構です」
亮の言葉を遮り、春加はそのまま部屋を出ていった。
営業中の春加のにこやかな姿しか知らないアメリアや他のスタッフ達は戸惑ったような顔をしていたが、それを打ち破るように、亮が明るく言う。
「ハルちゃん最近女王様の役作り中だから、多少ツンツンしてても気にしないでくださいね」
「Oh、ナルホドーネ!」
アッハッハとアメリアが高らかに笑い、場の空気がいっきに和んだ。
そのまま衣装合わせが再開された。

