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Memory of Night 2
第35章 同室者

「ーー何してんの?」
宵が部屋に戻ると、春加は戻ってきていた。ソファーに腰掛け何やら旅行用の大きなバッグから小さなショルダーバッグに荷物を入れ換えているようだった。
返答はなく、振り向きもしない。
「…………シカト?」
無視されているだけならいいが、全く反応がないと聞こえてすらいないんじゃないかと心配になる。
「うるさいな、時間がないんだよ」
「……どっか出かけんの?」
財布やスマホ、懐中電灯やカイロなどが見えた。春加自身も、紺のトレーナーの上にウィンドブレーカーを羽織っていて、防寒対策万全の服装をしている。
「……洞穴(ほらあな)」
手はせわしなく動かしたまま、単語のみ返ってきた。
「……え、なんで? もう外暗いだろ? てか、撮影明日じゃねーの? なんで今から行く気まんまんな格好なの?」
「……質問多い、あーもー鬱陶しいなマジで。一個にしろ」
「一個って……」
春加の苛立ち具合は、店のピーク時なみだった。
バイト中も、忙しい時に連続で質問すると一個にしろ、と怒鳴られる。
宵は一瞬考えて、聞きたいことを一つにまとめた。
「こんな時間になんで洞穴に行くの?」

