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Memory of Night 2
第41章 タイムリミット

雪はすぐに、崩れた土砂を白く覆っていった。関東でごくたまに降るような、風花やみぞれ混じりの柔い雪とは全然違う。
寒さも同じく段違いだった。風が吹きすさぶたびに、手や顔などの剥き出しの部分がぴりぴりと痛む。冷たいという感覚は通り越し、指を冷水に浸けた時のような痛みを感じていた。
「兄ちゃん、これ使え。あんまり防寒の意味は無いだろうが、何もないよりはいいだろ」
晃は突然背後から声をかけられ、目前に軍手を一組差し出された。掘るのを手伝いに来てくれている男の一人だ。
「ありがとうございます」
受け取り、感覚が無くなり始めていた両手に軍手をはめた。
防寒用の手袋やマフラーもバッグに入れていたが、急いでいたため上着しか持ってこなかった。布が一枚あるというだけで、冷たさはだいぶ防げた。
軍手をくれた男は、亮にも同じように一組渡した。いくつか用意してきてくれたらしく、他の男達にも声をかけている。
見渡せば、十人以上の男達が手伝いにきてくれている。みんなそれぞれ、別の目的で土方の屋敷を訪れていたはずだ。人の生死に関わる緊急事態とはいえ、真冬の東北のしかも山に、万全の防寒もないままこんなにたくさんの人が集まってくれたこと自体が奇跡に思えた。

