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Memory of Night 2
第7章 緊縛イベント

バイト中の春加は、わりといつもあんなだ。
宵はフロアに戻ろうとしたが、晃はなかなか目の前から退かない。
(こっちのが怒ってんじゃん)
晃の表情には変わらず笑顔がない。仕事に戻らせたくないんだろうなというのが透かし見えていた。
宵は迷った末、晃の頬に両手を添えた。そのまま数秒。ん? と軽く首を傾げる晃の唇に、自ら口付ける。
宵からのキスは本当に珍しく、晃は目を見開いた。
「……もう少しで上がれるから、待ってて」
囁く声も普段より優しい。宵は晃の腕をくぐり抜け、更衣室を出た。
「宵、帰ったら縛っていい?」
「……ちょっとだけだかんな、平日だし」
明日も学校とバイトがあるのに、朝まで解放してもらえないのはさすがに困る。
言い捨てて、宵はそそくさとスタッフルームを出ていった。
晃はしばらく自分の唇に指を添えたままでいた。宵からのキスの不意討ちに、不覚にもドキっとしてしまった自分がおかしく、自然と笑みがこぼれる。
「客商売に随分慣れてきちゃったな、あの子」
独りごちるように呟いて、晃もスタッフルームをあとにした。

