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Memory of Night 2
第50章 episode of 0
まったく言われなくはないが、数回程度だ。というか、自分が変わっているというなら、桃華も変わっていると思う。
「あ、それ、僕の名前……」
「そっちだって、あたしのこと名前で呼んでるだろ?」
確かに、と思う。本人と話さないうちに、いつの間にか名前にさん付けというのが秋広の中に定着してしまっていた。特に理由は思い当たらなかったが、可愛らしい名前だな、と思ったのがきっかけかもしれない。
桃華が仕事を続けられているか、何かトラブルに巻き込まれたりしていないか、気にするうちに頭の中で名前で呼ぶ方がしっくりくるようになってしまった。
(これはこれで……キモがられるのでは)
それももう今さらだ。
だが、桃華も自分を名前で呼ぶのはわかるが、呼び捨てとはどういうことなのか。仮にも雇われている会社の先輩に向かって、すごい度胸である。
桃華は唐突に、鞄から缶コーヒーを取り出した。
「これ、やる」
「え」
「差し入れにもらったやつだけど。あたし甘いの苦手だから」
缶にはミルクコーヒーと書かれていた。確かに甘そうである。
「……あと、おもいきり蹴って悪かった。フライパンで殴ったことも。痛みはない?」
「無いです、まったく」

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