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玉蘭花の香り
第1章 婚約
年末年始は、両方の実家に改めて挨拶がてら帰省することになっていたのに、駿はのらりくらりと言い訳をして、
結局、それぞれが実家で過ごすことになった。

「どうせ来年から毎年、お互いの実家に一緒に行くことになるから、
今年くらい、親子水入らずで過ごしたら良いじゃないか」と言われて、
そんなものなのかな?と私は思った。

電話やLINEしてもなかなか繋がらなかったけど、
忙しいのかな?と思ったりしていた。


母や祖母と一緒におせち料理を作ったり、
家族に薄茶を点てたりする、
いつもの新年を迎えながら、
来年の今頃は駿と過ごしてるんだろうと、考えていた。


駿とは同じ学校の同じ教科担当という間柄で、
一緒にあれこれ指導を受けてきていた。

問題を起こしがちのヤンチャな生徒が多いサッカー部の部長と顧問を押し付けられてから、
良く一緒に過ごすようになって、自然に付き合うようになった。

とは言っても、奥手で比較的大人しい自分に対して、
初めは紳士的な態度をとってくれてはいた。

厳格な家に育ったこともあって、
私はひどく保守的だった。

逆に駿は、そこそこモテて遊んできた感じではあった。


今はサッカー部OBの体育教師が入って部長になってくれたから、
私の方はその役割はなくなったが、
駿はいまだにサッカー部の顧問は続けているようだった。


教師同士の新歓飲み会で、
無理に慣れないお酒を飲まされた時に、
介抱されて、ラブホテルに連れて行かれたのが付き合い始めた直接的なきっかけではあった。

その後は、駿が時々、私のマンションに来るようになったけど、
逆に自分の部屋に私を招くことはなかった。



そして、年末年始は実家だからと言っていた駿が、
その時、他の女と一緒に居るなんてことを、
私は知らずに居た。
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