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フレックスタイム
第10章 時短の女
久し振りの育児は、
本当に周りから沢山の愛情を注がれるカタチで、
毎日幸せなことしかなかった。


翔吾さんは勿論、仕事で忙しくて不在のことも多かったけど、
極力帰宅して、手伝おうとしては、
「あらあら、かえって仕事を増やしてるんじゃない?」とお母様に笑われることも多かった。

ケンも、グズっているレンを抱っこしてあやしてくれたりする。

お母様は、
「赤ちゃん、小さくて怖いわ」と言って、
恐る恐る抱っこして、
「ねえ?首がグラグラしてるから、
やっぱり首が座ってから抱っこさせて?」とそっと私にレンを戻したりする。

そして、実家の両親や祖父も、
頻繁に遊びに来てくれる。
「ケンちゃんにお菓子、焼いてきたから」と、
毎回、ハンドメイドの焼き菓子を持って来てくれるのを、
ケンも楽しみにしていた。

古川さんも、とても嬉しそうに家事をこなしてくれている。
「やっぱり小さいお子様が居ると、
賑やかで楽しいですわね」と、
私がこだわって布オムツを使っているのでお洗濯も大変なのに、
かえって「懐かしいです」と協力してくれていた。


仕事は1年間の育児休暇の予定だったので、
出社はすることはない代わりに、
翻訳とメール対応と部下への指示出しだけは、自宅ですることにして、
ケンが幼稚園に行っていて、レンが眠っている時間だけ、
仕事をするようにしていた。


幼稚園への送り迎えは、
レンをお母様にお任せして、
阿部さんの運転で私が行くようにしていた。
ケンと手を繋いで車に乗って、
2人だけの時間を大切にしたかったからだった。


時々、夜の会食やパーティーがある時に、
翔吾さんに同行することもあった。

秘書として行くこともあれば、
妻として参加することもあった。

私のマンションに置いてあった桐箪笥と着物も家に運んで貰って、
妻として同行する時は、翔吾さんのリクエストで着物で参加するようにしていた。

せっかくだからと茶道のお稽古も再開することにした。
以前、習っていた先生の処にご挨拶に行った上で、
お母様に習うことにした。
子育てしていて、また、急なお休みなどになるとご迷惑をお掛けしてはいけないからということになったからだ。
「でも、お茶会の時は、是非、百合さん、貸してね?」と、
女学生のように楽しそうに先生とお母様はクスクスと笑いながら話をしていた。



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