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フレックスタイム
第10章 時短の女
子育て中心の生活のペースが出来上がってきて、
半年ほど経った。
ケンも年長さんに上がって、
そろそろ受験する学校も決めて行こうかと翔吾さんと話をしていた頃に、
たまたま会食で一緒になった伊藤さんが、
深刻な顔で「終わった後、お話しがあります」と言ってきた。
「えっ?私にですか?
翔吾さんにですか?」と訊くと、
「お2人にです」と言うので、
ホテルの中のバーに移動した。
私はグレープフルーツジュースにして貰い、
2人はマッカランのロックにして、
ひとまず形通りのお疲れ様の乾杯をして、
伊藤さんの話を待った。
なかなか口を開かないので、
「あの…私、席を外しましょうか?」と言うと、
「いや、百合ちゃんに聞いて欲しい話で…」
「えっ?じゃあ、俺が席を外す?」
「えっとですね。
妊娠したんです」
「えっ?誰が?」
「翔吾さんてばっ!
決まってるでしょう!
おめでとうございます。
予定日はいつですか?」
「9月中旬なんですよ」
「えっ?
池田さんが妊娠したの?」
「もうっ!
翔吾さん、それ以外、考えられないでしょ?」
「ただ、高齢出産だから心配で。
早めに産休になるかもしれないし。
だからどうしようか相談…」
「どうするも何も、
池田さんと赤ちゃんのこと、最優先以外、
することないでしょう?」
「まあ、そうなんですけど、
それだと秘書室の方が…」
「仕事なんて、誰がやっても同じです。
でも、お母さん業は、
お母さん以外、代わりは居ませんよ?
だから、仕事のことなんて、
たいした問題じゃないです。
そうですよね?
翔吾さん?」
「うん。まあ、そうだけど…
でも、どうするかは考えないとね?」
「ダメですよ。
決断は迅速に!
産休でも、育休でも、
ことによったら、出産を機に退職でも、
池田さんと赤ちゃんにとってベストなことを選ぶのが一番ですよ。
それ以外は、二の次ですから。
池田さんに心労与えて、
赤ちゃんが居心地悪く感じて何かあったら、
どうするんですか?」
「判った。
じゃあ、とにかく、
いつから産休取るかを決めて貰おう。
後任は、考えるから、
心配しないで?
それで良いよね?」と翔吾さんが言って、
伊藤さんはホッとした顔で、
「ありがとう」と頭を下げた。
半年ほど経った。
ケンも年長さんに上がって、
そろそろ受験する学校も決めて行こうかと翔吾さんと話をしていた頃に、
たまたま会食で一緒になった伊藤さんが、
深刻な顔で「終わった後、お話しがあります」と言ってきた。
「えっ?私にですか?
翔吾さんにですか?」と訊くと、
「お2人にです」と言うので、
ホテルの中のバーに移動した。
私はグレープフルーツジュースにして貰い、
2人はマッカランのロックにして、
ひとまず形通りのお疲れ様の乾杯をして、
伊藤さんの話を待った。
なかなか口を開かないので、
「あの…私、席を外しましょうか?」と言うと、
「いや、百合ちゃんに聞いて欲しい話で…」
「えっ?じゃあ、俺が席を外す?」
「えっとですね。
妊娠したんです」
「えっ?誰が?」
「翔吾さんてばっ!
決まってるでしょう!
おめでとうございます。
予定日はいつですか?」
「9月中旬なんですよ」
「えっ?
池田さんが妊娠したの?」
「もうっ!
翔吾さん、それ以外、考えられないでしょ?」
「ただ、高齢出産だから心配で。
早めに産休になるかもしれないし。
だからどうしようか相談…」
「どうするも何も、
池田さんと赤ちゃんのこと、最優先以外、
することないでしょう?」
「まあ、そうなんですけど、
それだと秘書室の方が…」
「仕事なんて、誰がやっても同じです。
でも、お母さん業は、
お母さん以外、代わりは居ませんよ?
だから、仕事のことなんて、
たいした問題じゃないです。
そうですよね?
翔吾さん?」
「うん。まあ、そうだけど…
でも、どうするかは考えないとね?」
「ダメですよ。
決断は迅速に!
産休でも、育休でも、
ことによったら、出産を機に退職でも、
池田さんと赤ちゃんにとってベストなことを選ぶのが一番ですよ。
それ以外は、二の次ですから。
池田さんに心労与えて、
赤ちゃんが居心地悪く感じて何かあったら、
どうするんですか?」
「判った。
じゃあ、とにかく、
いつから産休取るかを決めて貰おう。
後任は、考えるから、
心配しないで?
それで良いよね?」と翔吾さんが言って、
伊藤さんはホッとした顔で、
「ありがとう」と頭を下げた。