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フレックスタイム
第12章 予期せぬ来客、そして…
ケンが小学校高学年になった、
良く晴れた土曜日の朝のことだった。
その日はケンがサッカーで初めて試合に出るかもしれないということで、
阿部さんの運転する車で、
翔吾さんと私とケンでグラウンドに向かうことになっていて、
早朝、お弁当や飲み物などを用意して門を出た時だった。
車の前に突然女性が飛び出して来たので、
阿部さんが慌ててブレーキを踏んだ。
勿論、スピードも出していなかったので、
ぶつかる前に車を止めることが出来たが、
女性はよろめくように自分から車にぶつかって来た。
ケンと私を車に残して、
阿部さんと翔吾さんが外に出て、
その女性と話を始めたのを見て、
女性の正体に気付いた私は、
咄嗟にケンの手を握り締めた。
私の手と、そして身体も震えていて、
ケンが驚いた顔で、
「マミー、どうしたの?」と私の手を両手で握り返してくれる。
女性は車のボンネットに身体を乗せるようにしている。
翔吾さんが、
「警察を呼ぶよ」と言っているのが微かに聴こえた。
私はケンに、
「何があっても車から出ないでね」と言って、
車から降りた。
「接見禁止の筈ですよね?
なんですか?」と私が声を掛けると、
私に向かってその女性はこう言った。
「子供、出来たんでしょう?
テレビで観たわ。
だったら、ケン、要らないでしょ?
私に返してちょうだい」
「何、言ってるんですか?
ケンは私と翔吾さんの大切な子供です」
「だって、2人も男の子、
出来たんでしょ?
だったら、ケン、要らないでしょ?」
「警察、呼びますよ?
それともまた、私を刺すんですか?」
翔吾さんが、
緊張した顔で私を庇うように立ちはだかる。
阿部さんは、110番しようと携帯を車から取り出そうとする。
その時、車からケンが降りて来て、
私の手を握ると、静かに言った。
「前にも言ったでしょ?
僕のマミーは1人だけだよ」
「違うわ。
産んだのは、この私よ?
私が…」
「僕のこと、置いて消えたでしょ?
消える前だって、何もしてくれなかったよ。
叩かれたり、つねられたことしか覚えてないし」
「そんなこと…」
「覚えてないとでも思ったの?
それに知ってるよ。
マミーのこの手のこと…」
私の手の甲をそっと撫でると言った。
「マミーを傷つけたの、あんたでしょ?
僕、許さないからね」
良く晴れた土曜日の朝のことだった。
その日はケンがサッカーで初めて試合に出るかもしれないということで、
阿部さんの運転する車で、
翔吾さんと私とケンでグラウンドに向かうことになっていて、
早朝、お弁当や飲み物などを用意して門を出た時だった。
車の前に突然女性が飛び出して来たので、
阿部さんが慌ててブレーキを踏んだ。
勿論、スピードも出していなかったので、
ぶつかる前に車を止めることが出来たが、
女性はよろめくように自分から車にぶつかって来た。
ケンと私を車に残して、
阿部さんと翔吾さんが外に出て、
その女性と話を始めたのを見て、
女性の正体に気付いた私は、
咄嗟にケンの手を握り締めた。
私の手と、そして身体も震えていて、
ケンが驚いた顔で、
「マミー、どうしたの?」と私の手を両手で握り返してくれる。
女性は車のボンネットに身体を乗せるようにしている。
翔吾さんが、
「警察を呼ぶよ」と言っているのが微かに聴こえた。
私はケンに、
「何があっても車から出ないでね」と言って、
車から降りた。
「接見禁止の筈ですよね?
なんですか?」と私が声を掛けると、
私に向かってその女性はこう言った。
「子供、出来たんでしょう?
テレビで観たわ。
だったら、ケン、要らないでしょ?
私に返してちょうだい」
「何、言ってるんですか?
ケンは私と翔吾さんの大切な子供です」
「だって、2人も男の子、
出来たんでしょ?
だったら、ケン、要らないでしょ?」
「警察、呼びますよ?
それともまた、私を刺すんですか?」
翔吾さんが、
緊張した顔で私を庇うように立ちはだかる。
阿部さんは、110番しようと携帯を車から取り出そうとする。
その時、車からケンが降りて来て、
私の手を握ると、静かに言った。
「前にも言ったでしょ?
僕のマミーは1人だけだよ」
「違うわ。
産んだのは、この私よ?
私が…」
「僕のこと、置いて消えたでしょ?
消える前だって、何もしてくれなかったよ。
叩かれたり、つねられたことしか覚えてないし」
「そんなこと…」
「覚えてないとでも思ったの?
それに知ってるよ。
マミーのこの手のこと…」
私の手の甲をそっと撫でると言った。
「マミーを傷つけたの、あんたでしょ?
僕、許さないからね」