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フレックスタイム
第12章 予期せぬ来客、そして…
「ケンは、そのヒトの本当の子供じゃないのよ。
産んだのは私なんだから!
他の兄弟は、そのヒトの本当の子供でしょ?
だから、虐められるわよ。
だから、こっちに来なさい」


「いいえ!
ケンは私の…私と翔吾さんの大切な子供です。
弟達のこともとても可愛がってくれる優しいお兄ちゃまです。
貴女の入り込む余地はありませんし、
母親を名乗る資格もないです」と言って、
ケンの手を強く握り締めた。


いきなり、バッグから果物ナイフを取り出して、
振り回した。

私はケンを車に押し込んで、振り返ると、
翔吾さんが私を庇おうと抱き締める。


「翔吾さんっ…」
私も翔吾さんを庇おうと少しもがいてしまう。


彼女はそれを見て、
笑いながら自分の手首にナイフを当てた。


私は持っていたバッグでナイフを振り落とすようにして、
落としたナイフを遠くに蹴った。
そして、出血している彼女の手首にストールを押し当てた。


彼女は放心状態で、
すっかり動かなくなっていた。


「ケンの前でなんてことするの?
こんな処で死んだりしたら、
許さないから!」と止血しながら、
「阿部さん、救急車呼んで!」と言った。


先に通報したパトカーが到着したので、
止血を任せて、車に戻ってケンを抱き締めた。

話を終えた翔吾さんも、車に乗って、
私とケンを抱き締めてくれる。
私は震えが止まらなかった。


「百合、血がついてる。
怪我、してない?」と翔吾さんが私の手を見る。


「ちょっと掠っただけ。
私、運動神経ないから…」と言うと、
緊張の糸が途切れて意識が遠のいてしまう。



翔吾さんは慌てて外に出て、
救急隊員に声を掛けたようだった。

念の為にと、
もう一台、救急車が呼ばれて、
私はそのまま搬送された。

ケンと翔吾さんも付き添ってくれた。


彼女も、事情聴取されながら、
別の救急車に乗せられて、
同じ病院に運ばれたようだった。


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