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フレックスタイム
第2章 秘書室へ
「お化粧品…シャネルのなんですけど?」


「ああ、頼んでおいたんだ。
放っておくと、何もしなさそうだから。
ほら、何か、テンション上がるんじゃない?
そのマーク」と笑う。

しかも、シャネルのポーチまで、
紙袋に入っている。


「あっ。エルメスのポーチが良ければ…」


「いえ、こちらで結構です」と慌てて言った。
本当にまた、お店に連れて行かれて、
ポーチを買われてしまうと思ったからだ。


「脚は痛くない?
靴擦れとか、大丈夫?
タクシーで、佐藤さんの家まで行こうか?」と、
車を止めて3人で乗り込んだ。


「ケン、すごく偉かったね?
ちゃんと美容師さんに自分で言ってた」
と言うと、
誇らしそうな顔で笑って、
私の手をギュッと握った。


久々に帰宅すると、
小振りのスーツケースを出して、
これまでは会社に行くのと兼用だった部屋着とあんまり着てなかったパジャマ、それに普通の色気のない下着類を少し入れた。


「ねえ、立派な桐箪笥があるんだね?」


「茶道をずっと習っていたし、
着物が好きなので…」


「え?だったら着て欲しいな」


「箪笥ごとは持っていけないし、
着物は剥き出しでは置いておけないですよ?」と言うと、
少しがっかりした顔をした。


「そうだ!冷蔵庫!!」
キッチンに行って、
食材をチェックした。


冷蔵庫はこまめに食材を整えたので、
そんなに物は入ってなかったけど、
処分するものは処分して、ほぼ空にした。
冷凍庫の物を保冷バッグに移してから、
中をアルコールを含ませたキッチンペーパーで拭いた。


茅乃舎の出汁や粉物や乾物類も紙袋に詰める。

そして、中国茶の茶葉と茶器も丁寧に包んで詰めた。


「準備出来ました」と言って、
玄関から、黒の革製スニーカーを持って、
ブレイカーを落として家を出た。

下のゴミ置き場にゴミ袋を置いて、
大荷物になったので、タクシーで社長の家に戻った。
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