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フレックスタイム
第3章 秘書室の女
「これ、会社携帯ね。
取り敢えず、社長と僕のとハイヤー運転手の携帯と、
ここの直通電話だけ入れておいた。
あとは、フォルダー見て、関係者や取引先の電話、
入れておいてね?
ここまでで、質問は?」

「質問はありませんが、
前の部署にご挨拶などは?」

「ああ、そうだね。
この時間なら、部長が居るだろうから、
今、行くか」と歩き始めるので、
慌てて追い掛けた。


「悪いな。
佐藤さん、貰ったから!」

「伊藤には敵わないな。
佐藤さん、お局さんに虐められたら、
すぐに戻っておいで?」と部長は笑った。


「急で申し訳ございません。
途中案件は今週中に取りまとめておきますが、
基本的に全て、部の共有に入れてあります。
同じ社内ですので、ご不明な点がありましたら、
ご連絡ください」と言って、頭を下げた。


振り返ると、室長は既に歩き始めていたので、
デスクの鍵を開けてパソコンを持つと、
鍵はそのままキャビネットの挿しておいて、

「合間を見て、デスクを片付けておきます」ともう一度頭を下げて、室長の後を追い掛けた。


パソコンで社長フォルダーを見ながら、
今日明日の予定などを確認して暫くすると、
池田さんと田中さんが出社してきた。


室長が私を紹介してくれたが、
ちょうど電話が入ったこともあって、
軽く池田さんからは無視されてしまう形になった。


「電話は全部、池田さんが出るから、
出なくて大丈夫よ?
今週しかご一緒出来ないけど、宜しくね?」と田中さんは小さい声で言って微笑んだ。


室長は社長室に入ってしまったので、
「定例役員会の準備を教えてください」と田中さんに言った。


「資料は、前は印刷してホチキス止めて出していたけど、
ペーパーレスってことで、
全員自分のパソコンで見ることになったから、
お水出す程度かな?
場所を教えるね」と言って、席を立った。


キッチンの冷蔵庫からペットボトルを10本出して、
その分、箱から出したボトルを冷蔵庫に補充した。


「トレイ2つに、常温の水10本と冷たい水10本用意して、
社長用会議室に入った所の小机に置いたら、
準備完了よ?
終わったら、残りの水を、またキッチンに戻す感じかな?」

「これ、1人で運んでたんですか?」

「池田さん、電話から離れないからね」と笑った。
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