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第5章 辛い過去

「大学4年の夏、アルバイトの時に、
ちょっと翻訳して欲しい論文があるからって夫の部屋に連れて行かれて、とても強引に…。
無言で、本当に乱暴で。
私、初めてだったから痛いし怖いしで、泣いてしまったけど、
夫のお母様が、
『息子は百合さんのこと、大好きだから、
結婚を前提ってことで、付き合ってあげて』と言われたの。
その後も、アルバイトに行く度に毎回…。
母にも言えなくて、
体調悪いからとアルバイトをお休みしようとすると、
『体調悪いなら尚更、診察するからいらっしゃい』と、
主治医のお父様から母に言われてしまって断れないままで。
結局、あちらのご両親は黙認してた。
NOって言えなくて。
それに、コンドームつけてくださいとも言えなくて。
ただ、痛くて、早く終わってくださいと思うしかなくて。
勿論、知識として男女のことは知ってたけど、
もっと、神聖で甘くて幸せなものだと思っていたから、
どうしたら良いのかも判らないままだった。
それでね、妊娠してしまって、
内定していた会社も断って、結婚することになったの。
でも、結婚式もなかった。
『順番が違うのは体裁が悪い』って、あちらのお母様に言われたの。
順番違うのは、私のせいじゃないのに。
でも、何も言えなかった。
子供は…男の子だった。
凄く可愛くて…大切に育ててたの。
夫のご両親はその後、立て続けに亡くなって、
夫と私と子供の3人暮らしになった。
年老いたお手伝いさんは居たけど。
子供がまもなく4歳になる頃、
『跡取りが居るから、もうお前は要らない』と夫から言われて、
いきなり家を追い出されたの。
訳、判らなかった。
電話しても出てくれない。
家の鍵も変えられて、
チャイム鳴らしてたら、警察呼ばれたこともあった。
そして、ある日、家裁から呼び出されて、
離婚の調停をするって言われたの。
内容は、酷かった。
浮気女って言われたの。
子供の為にと、無農薬栽培のお野菜とかを配送して貰っていたら、
配達員と浮気をしていると言われて、
製薬会社の担当者とも浮気していると言われて、
出入りの酒屋の配達のおじいさんとか宅配便の人とまで浮気していると言われた。
それだけじゃなくて、
子供を虐待してるって…」

私は震えながら泣いてしまう。
社長は強く私を抱き締めてくれる。