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そぶりをやめて
第11章 半年と3日
「おかえり」

パソコンをカウンターの定位置に戻して、立ち上がる。

ハンバーグを温めないと。


自然に立ち上がって、カウンターの手前ですれ違う。

「はい、汐里。お疲れ様」

ぱさっと渡されたものを、咄嗟に受け取った。

ハロウィン仕様の小ぶりな花束だ。

「え、なにこれ?」

花束なんか、佳佑から貰ったことない。

「今日、仕事納めだったんでしょ。だから、まあ、どうかなって」

慣れないことして佳佑も照れてるのか、そそくさと踵をかえして、ウォークインクローゼットでネクタイを外し、スーツを脱いで、風呂に消えた。

「...ありがとう!」

風呂場の戸越しに、お礼を言う。
シャワーの音にかき消されたっぽいけど。

小さな花束は、思いっきりハロウィン仕様だけど。
プレゼントの気持ちが嬉しい。

しかし、花瓶があったかな。

キッチンやクローゼットで代用品を探すも、程よい大きさのものがない。

仕方なく、使ってなさそうなマグカップに突っ込む。

ダイニングのテーブルに置くと、一気に華やかになった。


何だか、くすぐったい。

小さいカボチャのおばけの作り物が、オレンジや紫の花の中にあるのに気づく。
目つきの悪いそのカボチャが、なんだかイビツで笑える。

ぼーっと見ていたが、風呂場の戸が開く音がして、我に返った。


ご飯の用意、用意!

なんとか並べていると、頭が濡れてボサボサになった佳佑が現れた。

仕事終わりだからか、お腹がペコペコだからか。
恐らくその両方で、この時間の佳佑は、言葉少なで機嫌が悪い。

無言で箸とか並べてくれて、2人の定位置に座る。

「「いただきます」」

今日のハンバーグは、ラタトゥイユ風煮込みハンバーグ。

野菜の色が鮮やかで、豪華に見える。
味も美味しい。
今日は“アタリ”の日だ。

「ワイン、って、なかったっけ?」

汐里が自分のハンバーグを半分ほど食べ終えた時に、佳佑がそう言って立ち上がり、冷蔵庫を探している。

いつものご飯の時は、お酒を飲むことは無い。

コロナ前は、よく接待やら、打ち上げやら、歓送迎会やらで、飲み会があって。
外で飲んで帰ることも多かった佳佑だが、家ではあまり飲む習慣がなかったらしい。
それは汐里も同じで。

だから、2人で住み始めてからも、数える程しかお酒は飲んでない。

それなのに?
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