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そぶりをやめて
第12章 200日
「ん...」

手を伸ばして、キスを受け入れる。

ふっと、笑った唇が視界に入った気がするけど、舌を絡めてねっとりと唾液が行き交う。
最中のものとも、始まる時のものとも、明らかに違う、緩やかで心地よいキスだ。
痙攣していた体がより落ち着いてくるように、いい意味で力が抜ける。

「...大丈夫?」
「ん...」

声が出そうにない。
さっきまで声を出し過ぎたのか、チカラが入らないのか。
おそらく、その両方。

佳佑が、あちこちに動いた枕や掛け布団を整えて、体を横たえている。
汐里の頭の下にも枕を差し入れてくれて、自然と寄り添うように横になる。

佳佑が横になったと思ったら、急に変な顔をして、ごそごそと動き出す。
お尻の下なのか太もものあたりなのか、手を伸ばして何やら取り出しているようだ。

2人の目の前に取り出したのは、あのピンク色した口紅型のローターだ。

「...ははっ」
「もー、やだ〜」

すっかり忘れてたけど、シーツの上にあったみたい。

「やだ、って。あんな気に入ってたのに?」

佳佑が手を伸ばして、枕元の棚に置いた。

「...そんなことないもん」
「うっそ。自分から押し付けてたよ?」

布団の中でくるりと寝返りを打って、佳佑に背を向けたのに、追いかけて抱きしめられる。

そうだった、ような気もするけど。
今そんな事を蒸し返されても、恥ずかしいし。

「あれ、すっげーエロかった」

耳元でそう言われて、体をぞくぞくっとしたものが走る。
脚の間に佳佑の脚が入ってきて、自然と汐里も少し動いて脚を絡めた。

汐里の肩の辺りに、佳佑の唇が近づいて優しく触れる。

さも愛おしいとばかりのその仕草に、きゅうっとなる。


気がつくと、そんな佳佑の頭に手を伸ばしている。

見つめ合って、ゆっくり唇が触れて。

何度かついばむように重ねてから、舌がそっとやってくる。


ああ...。私も、好きなんだ。


いや、ずっと前に気付いてたけど。

気付かないふりを、ずっとしてたけど。



優しく差し出された舌に、そっと重ねてみる。



今さら、言葉には出来ない気がする。




重なった舌が、今度は深く絡まってきて。

汐里も負けじと舌を絡めて、回した腕に力を込めた。
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