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そぶりをやめて
第16章 180日
何がしたいか聞いたのだから、応えないと。

シャワーを軽く浴びてから着替えて、ご要望の豚汁を作る。
作りながらも、何かが違うような気がするんだけれど。

まあ、1日は長いのだし。
汐里も今日は休みだと言っていたし。

「うん!美味しいねぇ。はあ~。最高!」

まあ、褒められたら嫌な気はしない。
すっごく美味しそうに食べてくれるので、作り甲斐もある。

早く食べ終わって、ゆっくりいちゃいちゃしたい。

そんなそわそわしている佳佑に比べて、汐里はまったり食事をしている。
おかわりして2杯目を食べてる時に、スマホの音が鳴り響く。

ピロリンピロリン。

「はいはーい」

ちっ。誰だ。

汐里が寝室に置き忘れたスマホを取りに行き、確認しながら帰ってきた。
なにやらニヤニヤと嬉しそうに返信してる。

気になる。
実に気になる。

汐里は友達が多い。
中学の同級生もそうだが、高校、大学。職場も2回転職してるし。
趣味の音楽を通じての友達など。
結構頻繁に連絡を取ってる。

佳佑も少なくはないが、ここ最近はコロナがあったり、結婚したりで忙しいし。
普段から、頻繁に連絡を取ることはしない。


誰なのか、聞いてもいいだろうか。

いや、変に嫉妬深いと、嫌われそうで怖い。


でも、気になる。

スマホを見ながら、やたらといい笑顔だし。

「食事中にスマホ触んなって」

つい嫌味かのような注意をしてしまう。

「ごめんごめん。だって、きえちゃんがー」

ん?
誰だって??

「おはぎをね。取りにおいでって」
「...きえちゃんって、ウチのきえちゃん?」

昔から佳佑の祖母が、“おばーちゃん”と呼ばれるのを嫌がって“きえちゃん”と呼べと言い張ってる。
小さな頃は従っていた佳佑だったが、今は恥ずかしいが先に立ってそんな呼び方はしてない。

「見てー。こんなにおっきなおはぎ!」

汐里のスマホにどデカいおはぎが写ってる。

祖母のきえは、面倒くさがっておはぎは作らない。
近所に住む友人の1人に、確か作るのが好きな人が居て。
そのおすそ分けだろう。

ってゆーか、いつの間にLINEの交換を。

「これ食べ終えたら、行くでしょ?そう返信しとくね〜」

止める間もなく、汐里がスマホに打ち込んでいる。

変な顔をしていたのだろうか、汐里が覗き込んでくる。

「おはぎ、嫌いなの?」

...違うし。
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