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そぶりをやめて
第10章 160日 〜その2〜
暗闇の中、炎が妖しげに揺らめいている。

ごくたまに、パチパチと、小さな音がするぐらい。


スタッフが点火した30分ほど前までは何組か座っていたが、夜の小川のほとりは、思ってたより寒くて。
数分見たら、恐らく寒さに負けてぽろぽろと引き上げて行った。

佳佑と汐里は、キャンプ好きな同級生のしょーたのアドバイスを聞きまくっていたお陰で、ゴツめのウインドブレーカーをしっかり着込んで来た。
同じく持ってきたキャンプ用の折り畳み座布団と、テント内にあったひざ掛けなんかも持って来て、完璧な装備である。

しょーたのお陰で、この綺麗な炎を今や2人で貸切状態だ。

「綺麗だね...」

張り切ってさっきスマホで、キャンプファイヤーの歌詞を予習してきたけど、そんなのを歌う雰囲気では全く無い。

吸い込まれるように、じーーーっと静かに燃える炎を見つめてしまう。

炎の形が予測不能に蠢いて、いくら見てても全く見飽きない。

人が来ないのを確認しているのか、やたらと佳佑がキョロキョロと周りを見渡してる。

何気にしてんの?

「よし、誰もいないな」

ごそごそと、なにやら用意し出した。

「...え、なにする気?」

まさかとは思うけど、変な事し始めないよね??

不安になって佳佑の向こうを覗き込む。

こそこそと細長い木の枝の先に、白いマシュマロを付けている。

「しょーたに聞いてさ。これ、超ウマいらしいよ」
「...なんだ。びっくりした」

こっそり焼きマシュマロをするつもりらしい。
キャンプ超初心者の汐里も、流石に焼きマシュマロの存在は知ってる。

「ん?何を期待してんの??」
「してません!」

佳佑が差し出してきた枝を奪い取る。

長めの枝を取ってきたつもりらしいが、座った位置からは炎に届かなかった。

立ち上がって、間近で炎にかざす。

「はい、全体が焼けるように、くるくる回して〜」
「え、あ、はい」

予習してきたのか、佳佑が焼き方を教えてくれる。
全くシロウトの汐里は、素直に従う。

「こんがりキツネ色になったら完成」
「え、ちょっと、キツネ色?ってどのぐらい??」

炎の光しかない中で、どう色を見極めろと?

「うーん。分からん。テキトー」
「ええっ。あ、そっちコゲてない?」

おそらく佳佑から見えにくい下の方にコゲが。

「え、うっそ!あっつつ!!」
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