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蒼い月光~くの一物語~
第12章 朱里の誠の敵討ち
剣山の剣先が、まともに朱里の心の臓を貫いた。
己の心の臓が弾ける音を聞いた瞬間、
朱里の意識が消えて闇が襲ってきた。
次の瞬間、天空より光が差し込み
朱里の意識だけが体を離れて宙に浮き上がった。
宙に浮き、
地上に横たわる己の骸を見下ろしていた。
腹の中の「ややこ」は
人としてまだ形成されていなかったのだろう、
ややこの意識を感じ取ることはできなかった。
右手は肘から先を切り取られ、
胸からおびただしい流血している骸・・・
だが剣山への恨みはなかった。
あの時、目に血しぶきが入らなかれば、
今、地上に横たわっているのは
剣山の骸であったはずだ。
勝負は時の運。
敗れたものは潔く負けを認めるのが
武士(もののふ)の道というものなのだ。
このまま天に昇ろう・・・
あたりを見回すと、
幾重もの光の筋が天空に向かって伸びていた。
うつろな眼の武士たちが
惜しむように地上を見下ろしながら
昇天していった。