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蒼い月光~くの一物語~
第13章 決戦!

時は来た!!


剣山殿に大館(おおやかたさま)の上杉殿より
親書が届いた

『いよいよ決戦なり 意を決して援軍に参られよ』

わずか二行の親書であったが、
署名の後に血判が押印してあるところをみると、 是が非でも援軍になれという命令に等しかった。

剣山軍は未明より馬に兵糧を積み、
甲冑に身を包み上杉領を目指すこととなった。

剣山は見送る千代をしっかりと抱きしめ、
接吻をした。

「必ず生きて戻る!案ずるな」 と
何度も繰り返した

千代を嫁に迎え入れるまでは
戦場(いくさば)が、武士(もののふ)としての
死に場所じゃ 身命と引き換えにしても
手柄をあげて本懐を遂げよと
家来に教えていたのだが、

千代を迎えいれた今は
家族のある家来には、
腕の一本ぐらいくれてやっても構わぬから
絶対に生きて帰らねばならぬと
命令するようになった。


「殿!出陣にございまする」

今生の別れになるやも知れぬ
熱い抱擁を引き剥がすように大老が急かした。


「千代!必ず帰る!
留守の間、城をしっかりと守るのだぞ!」
そう言って愛馬に飛び乗った。

「ご安心くださいませ!
千代は命に代えても城をお守りいたします」

去りゆく剣山の背に声をかけると、
剣山は振り返らずに「うむ!」と大きく頷いた。


千代は、小さくなっていく剣山の後ろ姿に向かって
深々と頭を垂れた。

城を守ると言っておきながら、
支度が整い次第、城を抜け出すのだ‥‥

一世一代の大嘘を、心の底から詫びた。


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