この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
蒼い月光~くの一物語~
第5章 くのいち修行
「あっぱれなものよ!!!」
娘は立派に成長した。
村の子供たちとも遊べず、
年頃になっても
化粧遊びすら許さなかった非を
心で詫びて疾風は涙した。
ウズメもまた涙を流した。
あの時、川原で拾い上げた赤子が
こんなにも成長したのか…
今日までのことが、走馬灯のように
脳裏を駆け巡った。
娘に嫉妬したことさえあった、
貧しい家庭ゆえ、
きれいな着物を
着せてやることさえできなかった。
親らしいことを
何一つできなかったことを詫びた。
「母様…何を言っておられるのですか。
母様がいなければ
朱理は今のこの時を
生きていることができませんでした。
母様のご恩…朱理は一生、
いや、たとえ今生の命が尽きようと忘れません」
今宵が親子三人の
今生の別れになるやもしれなかった。
親子三人は水盃で「くノ一」の出世を祝った。
疾風に連れられて首領の屋敷を訪ねた。
「娘を…朱理を「くノ一」として
お使いくださいませ」
疾風は土間に額を擦りつけて土下座した。
「疾風よ、親の贔屓目でなく、
この娘は『くノ一』として
働けるというのだな?」
首領の目が朱理の目を射抜いた。
朱理は恐ろしくて小便を漏らしそうになった。
「親の贔屓目ではございません、
この朱理は恐らく我が一族最強の
『くノ一』に仕上げました」
父の言葉を聞いて、
小便を漏らしかけた自分を恥じた。
私は父の弟子なのだ、
自分の弱さは父の顔に泥を塗るようなものだ。
私は女子(おなご)ではない!!
私は「くノ一」朱理なのだ!!!