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未亡人下宿~お部屋、貸します~
第1章 序章
「どうしたらいいものかしら…」
神崎麗子はため息交じりにポツリと呟いた。

某公立大学の近くに居住があったことから、
病弱だった亡夫が
「俺がいなくなってもお前に収入があるように」と
広い敷地内に大学生のための下宿アパートを建ててくれた。


一昔前までは、
学生達は賃貸料の安さに我先にと
競い合って下宿の申し込みをしてきたものだが、

最近の学生はリッチなのか、
親からの仕送り金額が大金になったのか、

やれ、オートロックだの、
ユニットバストイレ付きだのと
洒落た部屋を好むようになってしまい、

昔ながらの下宿スタイルの
麗子のアパートは敬遠されるようになった。




六部屋あるアパートで
只今の居住者はたったの2人だけだった。

これでは収入よりも
維持費のほうがかかってしまう。


「どうしたらいいものかしら」

今度は傍らで眉間に皺を寄せている不動産仲介業者の担当者に問いかけるように話した。

「やはり問題は
浴室とトイレが共同という点じゃないですか?」

この際だから徹底的にリフォームしませんか?


彼はいともたやすく
リフォームできるかのように語った。

「無理だわ…
間取りから何から何まで
手を加えなきゃなんないもの…」

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