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TRUE COLORS ~PURPLE~
第27章 Winter songs
「ね、お兄ちゃん。今いい?」
お兄ちゃんの寝室をノックしながらちょっと開けて声をかける。
シャワーを浴びたのか、濡れた髪をバスタオルでガシガシやりながらベッドに座っていた。
「おお、いいぞ。」
入れよと目で促してくる。
なんて切り出そうかなぁと思っていたらお兄ちゃんから先制パンチをくらった。
「お前たちのダンスの動画。あれ、お前も見たか?」
心臓がドキンと鳴る。
うん、と頷くと。
「ま。聞きたいことはいろいろあるが。率直に聞く。朝比奈氏が好きか?」
真っ直ぐ私を見据えてそう言うお兄ちゃんの顔。
初めて見る顔つきだった。
うん、とお兄ちゃんの目を見て頷くと
は~ぁと大きな溜息をつきながら項垂れてしまった。
ああ、我が妹の恋愛相談を受ける日がとうとう来てしまったか。
ベッドに座りバスタオルを頭に掛けたまま項垂れていたが。
沙織がなかなか言葉を発しないものだから。沈黙に耐えられず
「で、何が聞きたい?」
と水を向けてやる。
大学の友達たちとのLINEで言われた事をポツポツと説明してくる。
うん、年齢相応の反応と意見だ。
でも。ちょっと待て?
「マチ子ママの店で歌ったって言ったよな?」
どういうことだ?と説明を求めその店での一部始終聞いて眩暈がした。
朝比奈氏?
おいおい?こらこら?
俺ならこの時点で確実にアクション起こしてるぞ?
自分に対して少なからず好意を持ってる異性にこんな形で愛を告げられ求められたら、
間違いなく何らかのアクション起こすよな?
で、ルンバだろ?
そう思った時。
父さんが沙織たちの動画を見た時に言った言葉が思い出される。
『沙織の事を想って身を引いてくれようとしてたんだろうな。恐らく。』
『自分の気持ちを押さえて大人の対応しながら、
沙織を見守ろうとしてくれていたんだろう。』
『彼が沙織の手を素直に取れないの、分かるなぁ。』
確かそう言っていた。
そして俺が目撃した、ロビーで沙織を抱きすくめる様。
彼は本気の恋愛に不器用だ。
俺はそう感じた。
本気の恋愛を拒絶して来た。それが真実だろう。