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TRUE COLORS ~PURPLE~
第28章 New Year
「雅人、さん。」
朝倉医師が雅人の目線に合わせ、問いかける。
「俺、マサトっていう名前なんですか?」
躊躇いがちにそう朝倉医師に問いかける言葉を聞き、
私たちは衝撃を隠せなかった。
本当なら病室から飛び出して行きたいところだが、みな、唇を噛みしめ。
彼の次の発言を待った。
「見たところ、ここは病院なんですよね?俺、どこか悪いんですか?」
ああ、とマチ子ママの絶望ともとれるため息が漏れる。
気持ちはみな一緒だった。
「そうですよ。病院です。」
朝倉医師が雅人に、
薬の強力な副作用によって体調に異変をきたし昏睡状態だったことをかいつまんで話す。
そして、記憶に障害が出て今に至るため。
今後体力と記憶の回復のため、しばらく入院加療の必要があると説明していく。
「そう、ですか。」
俯きがちなまま、朝倉医師の説明を聞いた後呟くような言葉が出たと同時に
雅人の身体がぐらりと揺れる。
その身体を瞬時に支え、ベッドに横たわらせる朝倉医師。
「さ、今は何も考えずゆっくり休むことが必要です。」
と雅人に声を掛けながら掛布団をそっとかける。
そして、私たちに目で退室を促したのだった。